月別アーカイブ: 2021年3月

V6解散

仕事上がりにTwitterを見たら阿鼻叫喚だった。

弊社所属アーティスト「V6」に関するご報告 | ジャニーズ事務所 | Johnny & Associates

とりあえずV6ファンの友人たちの安否を確認した後、しみじみと感慨にふけった。

ファンクラブに入ることはなかったが、CDをしっかり買っていたくらいにはV6が好きだった。担当と言うにはあまりにもおこがましいけど、同い年ということもあって井ノ原さんが好きで、学生のころは、彼のピンキーリングがageteのものだと聞いて、同じブランドのピンキーを買ってつけていたりもしてたかな。

V6の皆さんには、なんというか同世代ならではの思い入れがある。彼らが今、それぞれ新しいステージへと踏み出すことを決意したことにも、なんとはなしの納得感がある。
淋しいけれど、どうかこれからの道が実り多いものとなりますように。心からの共感と応援の気持ちを込めて祈ります。

『朗読喫茶 噺の籠』の話とか

 と言いつつ、ほぼ石田彰さん大好きという話です。

朗読喫茶 噺の籠 | アニメイト

 声優さんたちが日本の名作文学をあらすじで朗読してくれるシリーズ。全巻揃えましたよ! アフタートーク特典つきアニメイト限定バージョンで。
 第1弾はなぜか発売日前日に配達されてフライングゲットしてしまったのだけど、第2弾は順当に発売日当日の配達だった。

 第1弾は、下野紘さんの『走れメロス』や、蒼井翔太さんの『御伽草子』[1]太宰治の作品に基づくテキストだったが、とするとタイトルの表記は『お伽草紙』とした方がよかったかもしれない。がとてもよかった。

 第2弾はまだ聞いている途中だけど、やはり石田彰さんが読む江戸川乱歩『人間椅子』。
 石田さんの多彩な声の中でも、個人的にとりわけ好きな低めのトーンで語られる『人間椅子』は、情景が目に浮かぶどころの話ではない、男の息遣いや椅子の質感まで感じられる臨場感にゾクゾクしてしまう。最高。

 アフタートークの「今までに聞いた朗読で印象に残っているもの」のお題は、昔の石田さんの心が震えた瞬間のお話。大切な宝物をこっそり見せてもらえたようで嬉しかった。[2] … Continue reading

 この朗読シリーズは、アフタートークも各声優さん一人語りの形式で、だからなのか、どの声優さんも素のご自身を少しだけ多めに出してくださっているように聞こえる(そう聞かせるのがプロ、ということなのかもしれないけど)。
 石田さんのお話もそうで、ごく普通に「あまつさえ」といった言葉が出てきたりする。日常的にそういう言葉が飛び交う世界で生きていらっしゃるだろうと思うと、文学ファンとしては、勝手かつ僭越ながら、同好の士よ! 的な親しみをおぼえてしまう。そして、もっと文学の話を聞いてみたいなと思ったりした。

References
1 太宰治の作品に基づくテキストだったが、とするとタイトルの表記は『お伽草紙』とした方がよかったかもしれない。
2 ちなみに、このシリーズ以前でわたしが一番好きな朗読は、やはり石田さんが読む立原道造の詩で、中でも「のちのおもひに」。歌の心とはこういうものなのか、と目の前が一気に広がるような思いがした。

10年

東日本大震災から10年。
14時46分が近づくと、感情が大きく揺さぶられて涙がこみあげてくる。まだまったく過去のものにはなっていない。

亡くなった多くの方々の平安と、残されたすべての皆さんの健康を祈る。

2021/03/10 その1

臨時休園中にひっそりといってしまった。しみじみとさびしく、かなしい。
今までありがとう。どうぞ安らかに。

菊池寛『第二の接吻』

 青空文庫で公開されていたので読んだ。

菊池寛 第二の接吻

 さすが菊池寛のメロドラマはよくできていて[1]真珠夫人』とか。、ぐいぐい読ませられてしまう。ちょっと『虞美人草』の藤尾を思い出させるような悪役令嬢・京子がとてもいい。


「ね、それを誓って下さい。誓う代りに、もう一度接吻してくれない? ギブ・ミー・ザ・セカンド・キス! 第二の接吻をして下さいよ。」


 昔の小説でよくある唐突な英語ってわりと性癖に刺さる。ストレイ・シープみたいなやつね。

 終板の怒濤の展開も楽しい。
 主人公の村川は京子の奸計にハマり、恋人の倭文子(しずこ)をめぐって、チャラい上司の宮田と夜の海岸で対決することに。
 場所が場所だけに当然の帰結として、村川は宮田ともども海に落ちてしまう。
 しかし水泳で鍛えた(という設定が突然出てくる)村川は陸に上がってくることができたのだが、宮田は行方不明に。
 え、どうすんのどうすんの、とハラハラしている読者を置き去りに、村川と倭文子はしれっと別荘に戻ってきて、愛を確かめ合う方に夢中になってしまうのだ。さんざん接吻を交わしたあと、


「宮田君が、死んでいなければいいがなあ。」
 村川は、心からそうつぶやいた。
「ほんとうですわねぇ。」
 だが、今まで二人とも気がつかなかった波の音が、閉めきったドアの隙間から、二人の幸福を脅かすようにきこえて来た。
「ああ宮田さん、どうぞどうぞ、生きていて下さいませ!」
 初めて恋愛の歓喜を味わい、恋愛によって生の楽しみを知った倭文子は、低く祈るようにつぶやいた。

 そう思うのであればとっとと警察に行くなり捜索隊を出すなりしましょうよ、と思うのだが、そんなことをする二人ではない。死んでいなければいいがなあ、ほんとうですわねぇ、じゃないよまったく。

 宮田君……。結局彼の生死は最後までわからないのである。
 

References
1 真珠夫人』とか。