2021/11/29

 出勤。
 今日はたまたま、わたしのいるエリアの人たちがみんな在宅勤務でさびしい。こころなしか気温も低めに感じる。置きストールがあってよかった。

 広島県の「働く女性応援よくばりハンドブック」[1]広島県 on Twitter: “【働く女性応援よくばりハンドブック無料配布中!】 … Continue readingがTwitterで話題になっていた、というか批判されていた。
 1年以上前に作られた冊子のようで、なかなかよくできている。たまたま公式Twitterで紹介されたからといって今ごろ炎上するのは気の毒にも感じるが、女性が仕事と家庭を両立したいと願うことを「よくばり」と表現した点、内容も男性不在で現状に追いついていない点等が批判されている。認識がアップデートされていない見解を、生活に直結する行政を担っている自治体が公式に出してしまったということで、多くの女性たちが反発するのも無理ないところかもしれない。

 もっとも、「よくばり」という用語の選択に、女性の願いを贅沢だと決めつける意図を読み取るのは、さすがに広島県に対して酷だと思う。これは、女性が従来期待されてきた慎ましさや控えめさを捨て、ほしいものに貪欲に手を伸ばしていく生き方を、ちょっとお茶目でほんのり露悪的な風味にデコってアピールしていくスタイルを意図しているのではないだろうか。これ自体はわりとありがちなスタイルのはずだ。女性向け雑誌等でもしばしば見かけるし、「よくばり女子」というキーワードでウェブ検索してみても、その手の表現がどっさり引っかかってくる[2]“よくばり女子” – Google 検索
 問題は、そういうスタイルがもはやだいぶ古めかしくなって久しい上に、そうやって先人たちがアピールしていった先の今なお、女性たちとその配偶者たちが取り組まざるを得ない諸問題について、まったく無理解に見えてしまっている点だろう。
 かわいい小悪魔っぽいスタイルで装わないと女性が自分の欲しているものやことを主張できなかった時代はとうに過ぎている。実際に仕事と家庭の両立問題に直面している女性は、もはやそんなスタイルにきゅんときている場合じゃない切実さを抱えている。
 さらに今は、仕事と家庭の両立は、女性だけの問題ではなくカップルの問題になりつつあるから、配偶者そっちのけで女性だけに語りかけられる言葉は、少なくともこの問題に関しては説得力を失いつつあるのが現状のはずだ。[3]ざっとTwitterの反応を見渡しても、職業等の属性関係なく、女性たちの反発を広く集めてしまっているように見える。

 こういった変化はほんのここ10数年に起こったものだと思う。わたしが子供を産んだ15年前だったら、「よくばりハンドブック」も違和感なく受け入れられていたはずだ。なにせ当時は、女性社員ばかりを集めた「働き方セミナー」で、会社の社長に「女性ばかりが働き方を考えても意味がないので、男性社員もこういったセミナーに出るべきでは?」と質問して、キョトンとされた時代だ[4]「私、そのルールのゲームでは遊んでないから」と言える自由 – 科学と生活のイーハトーヴ。とにかく働く女性といえば、女性ならではのロールモデルが必要だ、ロールモデルになれ杏寿郎、という感じだったと記憶している。
 その時代の記憶を引きずって、「後進のため」を口癖に、何者かになりたい欲をロールモデルにされたい欲に置き換えてアピールするワーキングマザーもいるにはいようが、もはや彼女たちがそれほど人望を集めなくなってだいぶ経つ[5] … Continue reading
 「よくばりハンドブック」はバリバリ「女史」的女性をロールモデルとしては採用していないので、さすがにその段階は通りすぎているように見える。しかし、はつらつお茶目な「よくばり女子」で訴求しよう、という認識も、既に古くなりつつあるところに気づいていないようなのが惜しかった。
 今の現役共働きカップルは、一昔前の人たちが想像もつかないくらい、対等な相棒として家庭と仕事の問題に取り組むようになっている。そのことについて、いろんな場所で理解が深まっていくといいなと思う。

References
1 広島県 on Twitter: “【働く女性応援よくばりハンドブック無料配布中!】 働く女性、働くことを考えている女性、育児中の女性、仕事と家庭の両立を希望する女性…すべての女性を応援する小冊子です♪ WEBでも読めます ⇒… https://t.co/vBlyJ0pU54”
2 “よくばり女子” – Google 検索
3 ざっとTwitterの反応を見渡しても、職業等の属性関係なく、女性たちの反発を広く集めてしまっているように見える。
4 「私、そのルールのゲームでは遊んでないから」と言える自由 – 科学と生活のイーハトーヴ
5 睡眠時間3~4時間でなんでも完璧にこなすワーキングマザーのタイムテーブル特集、みたいなのが女性誌に紹介されたときのTwitterの反応を見ればわかる。