ロシア料理と寺山修司

ゆうべ『同志少女よ、敵を撃て』を読み終わった勢いで、お昼はロシア料理(神保町、ろしあ亭さん)。
ことのほか寒かったのでありがたかったボルシチ。

からの渋谷に移動して、音楽劇『海王星』。

寺山修司の未上演の戯曲をPARCO劇場で、となればいやが上にも高まる期待を裏切ることなく、とても充実した舞台だった。
南海岸への出港を待つ人々が集う北海岸の難破船のホテル、という童話めいた舞台に満ちた閉塞感と頽廃の中で、交わってはすぐ離れてしまう純粋な思いの糸の数々が切なかった。
ドレスコーズの志磨遼平さんの音楽は、ノーブルでどこかノスタルジックで、見終わった今でも思わず口ずさんでしまうような魅力にあふれていた。
寺山修司が何を意図して書いたのかは知らないが、間違いなく極上の大衆演劇だった。

主演の山田裕貴さんは、それこそゴーカイブルーのころから大好きな役者さんで、特に最近は『ハコヅメ』の山田刑事の切々と胸を打つ長台詞が見事だった記憶がある。今回も本当に素晴らしかった。そりゃ魔子さんも一瞬で恋に落ちるわと納得のまっすぐな色気が美しかった。ロミジュリバリエーションのようなストーリーの、ロミオ、でもあり、ジュリエット、でもあり。
そして圧倒的だったのはユースケ・サンタマリアさん。彼が登場しただけで空気が変わって、もう目も耳も離せなくなった。舞台で拝見したのは初めてだけど、鳥肌が立って止まらなかった。
トリックスターというか狂言回しで、「そばかす」という女学生(?)が登場するのだけど、何もかも見えているのに、ものごとを掻き回さずにはいられない彼女がとにかく魅力的。演じたのは清水くるみさん。
実力派揃いがすぎる。
どうしてこれまで演じられることがなかったんだろう、と思ったのだけど、この座組が揃うのがまたれていたのかもしれない。

寺山修司の言葉の力に完璧に圧倒された。
頭の芯まで揺さぶられるような酩酊は、どの言葉もそこに配置されるしかないところに、それしかないものとして配置されているからこそ生まれた。言葉の緻密な狙撃によって必然的に引き起こされたものだと思う。