Twitter大騒ぎ

 イーロン・マスクがTwitterを買って以来、大騒ぎになっている。

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 マスクは、彼にとっての理想の言論が繰り広げられる「公共の街の広場」(public town square)を作りたいみたいだが、差別的、暴力的な言論が野放しになる広場は果たして維持可能だろうか。


(「世界一の金持ちがこのソーシャルメディア街の広場を買い、企業が別の場所で金を使おうと決断することくらい、アメリカらしいことはあるだろうか?」)

 とはいえ、もうずっと以前から、Twitterは、わたしにとってさほど居心地のいい場所ではなかった。かつてのTwitter本社は、それでもトランプのアカウントを凍結することができたけど、Twitter Japanは、よりひどい差別主義・歴史修正主義・非科学的アカウントを野放しにしているどころか、ときに優遇さえしている[1]Twitter「聞いていた運用と違う」 日本青年会議所の問題リツイートに苦言、「メディアリテラシー」めぐり炎上。その傾向が全世界的に加速するかもしれないと思うと暗澹とする。

 Twitter以外の場所を探そう的ムーブメントは、過去にも何回か起こったと記憶しているが、それでも多くの人がTwitterに残ったことを考えると、今回もまた、いっときの騒ぎが過ぎれば、またなにごともなかったかのようにTwitterの日常が戻ってくるかもしれない。
 Mastodonがまたユーザを増やしているようだが、あれは、興味や関心を持てる人を探し、つながる機能が決定的に弱い。分散型SNSは、自分でインスタンス(サーバ)を立ててこそおもしろくなるのだが、Mastodonのインスタンスは維持管理のコストが高すぎる。Mastodonがいいなと思った人であれば、とうにDiscordなどを使っているだろう。MastodonがTwitterに代わる大きな勢力になるような気はあまりしない。
 たとえばTwitter創業者のジャック・ドーシーたちが作っている新しい分散型SNSのBluesky[2]Bluesky Social[3]Twitter創業者の立ち上げた分散型SNSプロトコル開発団体が新SNS「Bluesky」を発表のような新しいSNSが、どれくらいおもしろいものになってくれるか、そこに有力なインフルエンサーがどれくらい参画していくことになるのかに、今後、Twitterが生き残れるかどうかがかかっていきそうだ。

 日本に限って言えば、テレビ番組の実況や、ニュースなどをネタにした大喜利ができて、ふんわり楽しいコミュニケーションがとれればそれでよい、と思っている人も多そうだから、なおさらマスク体制のTwitterに逆風が吹く理由がない。
 Twitter Japanが差別主義・歴史修正主義・非科学的アカウントを許容し続けてきたことで、権威があって(フォロワーが多くて)声の大きい者であれば、たとえその主張がどれほど理不尽なものであっても、この「広場」の秩序を保つ善い存在と評価され、理不尽に対して反対の声を上げる人は、和を乱すめんどくさい存在として疎まれ、叩かれ、排斥されやすくなってもいる。疎み、叩き、排斥するのが、普通に顔を合わせれば気のいいお隣さんたちである、というのがポイントだ。
 太平洋戦争時の、今から思えば信じられないような全体主義の覇権も、こういった小さな仲間はずれの積み重ねが支えていた部分が大きかったのではないか。
 実際、以前、比較的親しかったアカウントの中にも、ずいぶんと過激な差別主義や権威主義の、仲間内では声の大きなアカウントに阿るようになってしまった人たちが何人かいる。
 そういった意味で、この「ソーシャルメディア街の広場」もまた、現実の社会と地続きなものではあるのだが、そこに四六時中居続けることは、わたしには耐えられない。

 だからこそ、わたし自身は、もうずっと前から、Twitterだけをネット上の居場所にするのはかなわないなと思っていて、ブログやDiscordなどの居場所を作ってきてはいるけれど、はたしてどれだけのTwitter上の友人たちが同じような選択をしてくれるだろうか。