演劇集団Ring-Bong「みえないランドセル」

コロナ禍、母の苦悩描く 目黒で創作劇上演 /東京 | 毎日新聞
演劇集団Ring-Bong「みえないランドセル」開幕、“児童虐待”テーマにコロナ禍の人々描く(公演レポート / コメントあり) – ステージナタリー
虐待を考える演劇の力 劇作家「解決への希望伝える」(1/3ページ) – 産経ニュース

 昨日の17:00からの回を見た。
 コロナ禍の中、人と人とのつながりからふとこぼれ落ちてしまったシングルマザー・遙。その苦悩と再生を描く。
 遙は壮絶な過去を持っていることが明らかになるのだが、どこか通じるところのある傷は、誰しも持っているのではないか。
 遙を再生に導く周りの人たちも、決して完璧な「ポリコレ」聖人などではない。Twitterに投稿したら炎上しそうな、悪気のない偏見だって持っている。とてもリアルだ。

 「なんかさ。『生き延びる』と『生きる』とさ。どっちが大切かみたいなことになってくるよね」という登場人物の言葉が印象的だった。
 『生き延びる』と『生きる』を天秤にかけて、どちらかを選べと強要されるような場面が、コロナ禍では頻繁に訪れ、それが分断をも生んでいる。
 しかし、『生き延びる』と『生きる』は両方とも、その根底に、完全でも完璧でもない人たちがつながりあい、手を差し伸べ合うことがあるような気がする。それが分断を埋める架け橋となるのではないか。なることを願う。

 このお話はコロナ禍の時代を舞台にしているので、登場人物たちの日常に、マスクや消毒などのしぐさが当たり前のように組み込まれている。
 自分が普段やっていることが、あらためて舞台の上で目の前に描き出される。自分の日常が非日常の中に取り出され、それを客席から見る。自分の体験はみんなの体験でもあるということが、圧倒的な説得力をもって迫ってくる。と同時に、自分が日常だと思っていたものを客観的に見て考えることもできる。演劇の力だと思う。
 
 アフタートークのゲストは、「すくすく子育て」等でもおなじみの大日向雅美先生。
 大日向先生が40年ほど前に、大学院に通いながら子育てをなさっていたとき、時間延長の相談でかけた電話で、保育園の園長先生に「ああ、育児放棄のお母さんね」と言われたというエピソードに胸が痛んだ。
 ただ、先生もおっしゃっていたように(そして先生をはじめとするたくさんの皆さんのたゆまぬ尽力により)、時代は変わってきているという実感は私にもある。
 今の子供達が大きくなるころまでにはもっと変えていきたい。