2021/07/17

 結局、SARS-CoV-2というウイルスをどれくらい怖がったらいいのか、というある程度のコンセンサスが取れていないと、国を挙げてウイルスと戦うことは難しいのだろう。
 政府や国のリーダーがこのウイルスの危険性を高く見積もり、ウイルスと戦う必要性を強く発信しさえすればうまくいくかというと、そうも行かなそうなのが厄介なところ。
 とはいうものの、国の指導層が率先して楽観的な見通しを広報するのは、さすがにダメ寄りのダメなんじゃないかと思う。
 ジョンソン首相が「コロナとの共生」を大々的に打ち出して、規制の全面解除へ進み始めたイギリスでは、1日の感染者数がついに5万人を超えた。[1]イギリスの新規感染5万人超 デルタ株が若者中心に急拡大 – 毎日新聞
 そして日本では、安倍元首相と菅首相が「コロナに打ち勝った証」に拘ったオリンピック東京大会が開催されようとしており、連日の「安心・安全」の連呼の下、緊急事態宣言中にもかかわらず、感染の急拡大が続いている。[2] … Continue reading東京の今日の新規陽性確認数は1410人。検査陽性率は8.9%だ。

 感染者数が増えれば必ず死者数も増える。後遺症に苦しむ人も増える。
 たとえワクチンの接種が行われていても、相当数のウイルスの増殖を許している限り、さらに厄介な変異株を生み出すリスクを常に抱えていることになる。
 「コロナとの共生」「ウィズコロナ」を目指す取り組みは、あまりに多くの人の生命と健康を危険にさらすもので、科学的にも道義的にもまったく評価すべきところがない社会実験だ。
 他人が苦しみ、命を落とすことへの想像力と、ウイルスの進化についての知識が著しく欠けているのでない限り、到底出てこない発想のはずだ。

 緊急事態宣言の効果がほとんど見られておらず(IOCのバッハ会長が日本を飛び回っているのを見て、誰が自粛しようと思うだろうか)、ワクチン2回接種が済んでいる人の割合がまだようやく人口の2割という状況で、デルタ株が急速に拡大している日本。今回の感染拡大の波はどれほど高くなるか、想像もつかない。

References
1 イギリスの新規感染5万人超 デルタ株が若者中心に急拡大 – 毎日新聞
2 食品会社に勤めていたころ、安全あっての安心なのだから、絶対に「安全・安心」の順番で言えと教育されたものだが、何かにつけて感情優先の現政府は、安全は二の次で、「安心感」の醸成こそが政権維持のために重要だと考えているのだろう。「国民の不安、パッと消えます」というやつだ。