読んだものとか見たものとか」カテゴリーアーカイブ

柳家さん花さんの会

 下北沢「劇」小劇場で。「古典粒選」第2回。
 さん喬一門箱推しだけど、ちょっと(だいぶ)えこひいきしてるのが小んぶさん改めさん花師匠で、「らくだ」を通しでやってくださるというので飛んでった。

 さんざん笑ったマクラが後々しっかり伏線になっててびっくりした。
 初天神、「ねだらない」金坊と、その金ちゃんにお銭を恵んでもらいながら買い物するお父さんの組み合わせが楽しい。お父さんが金ちゃん大好きなのが伝わって、じんわりあったかくなる。
 安兵衛狐、さん花さんの安兵衛狐好きなので嬉しかった。この後のらくだワールドへの導入っぽさもあるのかな。
 お仲入りはさんでいよいよネタおろしのらくだ(通しとしては初めて、ということかな)。出囃子はカンカンノウ。たっぷり楽しかった。おっきい体と声の迫力と、生き生きとわかりやすい人物の演じ分けと、屑屋さんの性格が豹変していく繊細な表現がめちゃくちゃハマってるから当たりそう。いつも思うけど口跡がほんとうに気持ちいい。

 これで年度末の激務を乗り切れそう。ありがとうございました。

ポンペイ展

東博のポンペイ展に行ってきた(五七五)。
子供と行ったのだけど、てんでに好きなように見て歩き、適当に待ち合わせるスタイル。博物館はこれができる相手と行くのがいちばんいい。

まさしくメメント・モリで、常に死を意識しながら見る人々の生活の跡は、目の前の現実よりもなお生に溢れて映る。
豪邸でもアトリウムくらいまでは比較的自由に人が出入りできたとか、階層(階級)の移動が比較的自由だったとか、女性の実業家や富豪もいたとか。全き楽園だったはずはないにせよ、そこを、その時代を訪れてみたいと思わせるに十分な輝きの片鱗が見えた。
小野友樹さんと小野賢章さんの掛け合いで進む音声ガイドも楽しかった。

グッズはどれも欲しくなっちゃって困ったけど、トートバッグとピアスと図録を買った。

パンを買うファウヌス(トートバッグ表)

パンを買って踊りながら帰るファウヌス(トートバッグ裏)

炭化したパンのピアス(背景は図録)

お昼食べて、子供はまだ見たいものがあるというので、わたしは先に帰って付記試験の勉強。
リングフィットとフィットボクシングもがんばりました。

2022/01/23

朝は焼きたてクロワッサン。買った冷凍生地を軽く解凍してオーブンで焼くだけでさくさくふわふわの幸せが口いっぱいに。

だいたい勉強してたのでわたしの昼は豆腐丼、家族は適当に(ごめんね)。
夜は鶏胸肉と千切りキャベツと千切りにんじんで鍋しゃぶ。

子供が、オペラ座の怪人ロンドン25周年記念公演DVDをTSUTAYAで借りてきたのを一緒に見た。めちゃくちゃよかった。これ見ちゃうと映画版見れなくなっちゃうな。学校の音楽の先生レコメンドの円盤だそうで、さすが。
しかしカテコ後のレジェンド揃い踏みサラ・ブライトマンNTR茶番はなんだったのか(エモいにはエモかった)。

リングフィットも地味に続けていて、今日は15分25秒。

三連休の終わり

 昨日の話。

 昨日は一日『ミチクサ先生』(伊集院静)を読んでのんびり。

 最近はわりと一般的になってきたかもしれない、明るくユーモラスな漱石像に基づく伝記的小説。だからこそ、晩年の壮絶な闘病生活がより痛ましく、つらく胸に迫ってくるのだが。
 ノボさん(正岡子規)や鏡子さんなど、漱石を取り巻く人たちへのまなざしも温かく、気持ちよく読めた。
 タイトルの「ミチクサ」は、もちろん『道草』でもあるし、この作品における漱石の生き方にも由来する。

あの築山のてっぺんに登るのに、真っ直ぐ頂上を目指す者もいれば、裏の方から這い上がる者もいるだろうし、まったく違った径から登る者もいる。径の間違いで滑り落ちる者もいるだろうが、落ちることはたいしたことではない。

 昨日の夜は、映画『アメリ』を見た。子供ももう15歳なので一緒に。

『mRNAワクチンの衝撃 コロナ制圧と医療の未来』


 読んだ。
 
 新型コロナウイルスとの戦い方を一変させたmRNAワクチンのうちのひとつ、BNT162b2を開発したビオンテック社の物語。
 一般にファイザーワクチンと呼ばれるが、ワクチン名に「BNT」と入っているとおり、開発を主導したのはドイツのバイオベンチャー、ビオンテック(BioNTech)社だ。本書は、ビオンテックを創業したウール・シャヒンとエズレム・テュレジ夫妻を中心に、この画期的なワクチンの開発をめぐるドラマを、生き生きと、時に若干引いてしまうほど高揚気味のテンションで描いている。

 「このワクチンを構成する最も重要な要素は、RNAではない。ウール・シャヒンとエズレム・テュレジという二人の人間なのだ。」(エピローグより)

 ……いや、そこはさすがにRNAなのでは、と思ってしまうが。

 それでも、ワクチン開発チームを組織してからワクチン候補を人体に投与する試験まで、わずか88日という目にもとまらぬ速さ(ライトスピード)で開発を進めたウールとエズレム、そしてビオンテックメンバーの熱意と能力とチームワークの見事さにはワクワクする。mRNAワクチンの仕組みも、読んでいればすんなり理解できるように書かれているので、特に生物学に詳しくない人でもストレスなく、エキサイティングな科学読み物としても読めるはず。

 ワクチンの安全性と効果が証明された後、各国で承認を得、販売するまでの各国規制当局や政府とのやりとりも詳細に紹介されていて、2020年終わりから2021年初めにかけてのワクチン争奪戦で何が起こっていたのか、その一端がうかがえる。
 アメリカ大統領選挙前後、有効性データの発表時期が変更されたことについて、FDAの政治的意図があったかどうかは曖昧にぼかされていて、ちょっとおもしろかった。いずれにせよ「きわめて重要な決断だった」のは間違いない。

 また、ワクチン確保に関するEU、EU各国、そしてイギリスのスタンスの違いも興味深いものだった。
 どうもEUは、ビオンテックが米国企業のファイザーと手を組んでいたが故に、ビオンテックに塩対応だったらしいのだが、ビオンテックCEOのウールは、EUに対してそれほど批判的ではなかったというところに優れた人格が読み取れる。それだけでなく、ウールとエズレム夫妻が常に冷静に、真摯で謙虚な心の在り方を貫いている姿には胸を打たれるものがあった。著者が、このワクチンは夫妻あってこそと主張するのも理解できる。
 そうすると、ファイザー/ビオンテックと双璧をなすmRNAワクチンの開発に成功したモデルナ社には、どんな開発ストーリーがあったのか。比較してみたくなる。

 もう少し研究寄りの興味からいうと、ビオンテック副社長のカタリン・カリコの話をもう少し読みたい気もしたが、彼女については別の本があるので、こちらをこれから読む予定。

 オミクロン株が全世界で猛威を奮っていて、先進国では3回目、4回目のブースター接種が進められようとしている一方、途上国では1回目、2回目すら進んでいないところも多い。
 ヒトでこれだけ感染が広がっていれば、当然、動物にも感染が広がってしまう[1]シカで陽性率36% ヒトからコロナ拡大 昨冬にオハイオ州大調査:朝日新聞デジタル。野生動物の中で変異が進んで、感染性や毒性が上がったものが再びヒトに感染する可能性もあるし、ヒトの中で変異が進む可能性もある[2]Omicron’s ‘wacko’ combination of mutations has scientists split over whether it developed in humans or animals。とにかく、ウイルスは増殖するチャンスがある限り変異と進化を続けるのだ。
 変異はランダムに起きるから、すべての変異株が危険なわけではない。[3] … Continue reading
 ただ、進化の結果、新型コロナウイルスが確実に弱毒化する保証はどこにもないし、問題のある変異株が出てくるたびに、新しいワクチンを開発し、それを全世界の人に打つことが、果たしてどれくらい現実的なのか。世界的なワクチンの不平等を解決しつつ、もう少し抜本的にこのウイルスに打ち勝つ方法を模索しないといけない時期に来ているようにも思う。
 

References
1 シカで陽性率36% ヒトからコロナ拡大 昨冬にオハイオ州大調査:朝日新聞デジタル
2 Omicron’s ‘wacko’ combination of mutations has scientists split over whether it developed in humans or animals
3 変異株が生まれるたびに過剰に恐れることに関しては、メディアの報道によって必要以上に危険性を煽られている変異株について、「scariant」という造語が生まれているくらい、問題になっている。

ロシア料理と寺山修司

ゆうべ『同志少女よ、敵を撃て』を読み終わった勢いで、お昼はロシア料理(神保町、ろしあ亭さん)。

からの渋谷に移動して、音楽劇『海王星』。

寺山修司の未上演の戯曲をPARCO劇場で、となればいやが上にも高まる期待を裏切ることなく、とても充実した舞台だった。
南海岸への出港を待つ人々が集う北海岸の難破船のホテル、という童話めいた舞台に満ちた閉塞感と頽廃の中で、交わってはすぐ離れてしまう純粋な思いの糸の数々が切なかった。
ドレスコーズの志磨遼平さんの音楽は、ノーブルでどこかノスタルジックで、見終わった今でも思わず口ずさんでしまうような魅力にあふれていた。
寺山修司が何を意図して書いたのかは知らないが、間違いなく極上の大衆演劇だった。

主演の山田裕貴さんは、それこそゴーカイブルーのころから大好きな役者さんで、特に最近は『ハコヅメ』の山田刑事の切々と胸を打つ長台詞が見事だった記憶がある。今回も本当に素晴らしかった。そりゃ魔子さんも一瞬で恋に落ちるわと納得のまっすぐな色気が美しかった。ロミジュリバリエーションのようなストーリーの、ロミオ、でもあり、ジュリエット、でもあり。
そして圧倒的だったのはユースケ・サンタマリアさん。彼が登場しただけで空気が変わって、もう目も耳も離せなくなった。舞台で拝見したのは初めてだけど、鳥肌が立って止まらなかった。
トリックスターというか狂言回しで、「そばかす」という女学生(?)が登場するのだけど、何もかも見えているのに、ものごとを掻き回さずにはいられない彼女がとにかく魅力的。演じたのは清水くるみさん。
実力派揃いがすぎる。
どうしてこれまで演じられることがなかったんだろう、と思ったのだけど、この座組が揃うのがまたれていたのかもしれない。

寺山修司の言葉の力に完璧に圧倒された。
頭の芯まで揺さぶられるような酩酊は、どの言葉もそこに配置されるしかないところに、それしかないものとして配置されているからこそ生まれた。言葉の緻密な狙撃によって必然的に引き起こされたものだと思う。

蝶々夫人(新国立劇場)

昨日、千秋楽を見に行った。

満を持してのロールデビュー中村恵理さんが美しくて、力強くて繊細で、これぞプリマドンナの存在感。
ピンカートン村上公太さんの明るく豊かな声もとてもよかった。

テラスでドリンクと軽食提供の試行も始まり、観客たちがドレスアップして、開幕前や幕間に談笑する空間が戻ってきて感無量。
気がつけば、この空間で隣に立っている子供が匂い立つように成長していて、ちょっと泣きそうにも。

この苦しい2年間を乗り越えて、よくぞ音楽と演劇の火を絶やさずに来てくださったものだと感謝してもしきれない思い。

柳家さん喬一門会(かめありリリオホール)

やっぱり撮ってしまう。

大盛り上がりで、途中25分押しまでいったものの、最終的には15分押しまで短縮された。

大好きな小んぶさん改めさん花さんと、小太郎さん改め㐂三郎さんの真打昇進お披露目も兼ねつつの一門会。
とにかく仲良しのご一門らしい、温かくて大爆笑連続のいい会だった。

開口一番小きちさんは「道灌」の前半。めちゃくちゃいい声。元気がよくて楽しかった。
やなぎさんは「締め込み」。なんだけど、枕からもうずっと大爆笑で、客席の人気をいきなり全部もってった感がある。クアアイナ東京スカイツリー店、ちょっと行ってみたくなってきた。
あったまりすぎて若干やりにくそうだった小平太さんは、安心安定の「壺算」。とても好きな話を小平太さんで聞けてよかった。
個人的お待ちかねのさん花さんは「安兵衛狐」。人物(人外も含め)と情景がいきいきと目に浮かぶことといったらピカイチで、ただひたすら楽しかった。5列目上手寄りというすさまじい良席だったので、頻繁に目線をいただけて幸せだった。
お仲入り前はさん喬師匠で「寝床」。こんなにめんどくさくてかわいらしくて愛おしい旦那もちょっとない。

ところで、4時開始8時終了予定で仲入り15分て、だいぶスパルタだと思うんですよね。

さてさて第二部は、ご一門揃っての口上。兄弟子の皆さんからの心温まる、ときどきヒヤッとしたり爆笑したりもある口上でほっこりしたところで、なんと師匠からのサプライズ大喜利が始まった。
どこからどこまでがサプライズなのかはわからないけど(だってどう考えても第二部の予定時間がおかしい)、さすがに息の合ったご一門で、盛り上がること、盛り上がること。
ちなみにお題は、「謎かけ:新真打とかけまして」「一門に◯◯な新弟子が入ってきたら、どういう高座名をつけるか」の2題。
最後に、前座の左ん坊さんが「一門に、本日のお客様が入門されました。(嬉しいですね。どんなお名前をつけますか) 柳家だいせい喬(大盛況)」と綺麗に締め、満座の大拍手を見事にさらっていった。

換気休憩をちょっと挟んで、㐂三郎さんは「くしゃみ講釈」。もちろん大爆笑なのだけど、講釈部分もしっかり聞かせてくれるのはさすがの実力。
マジックのダーク広和さん、めちゃくちゃ近くで見てたのにさっっっぱりわからない。シカゴの四つ玉以外は(子供のころ、すごく練習して結局できるようにならなかったやつ)。
大トリは喬太郎さん。ここまでずっと古典だったので、古典かな、それともやはり、と思っていたら、来たのは「カマ手本忠臣蔵」。センシティブな題材だけど、もう100年、200年したらもっと自由に……というL・O・V・E・愛の芯が貫かれているので、安心して聞けた。

年の瀬(年の瀬!)のひととき、温かい笑いをたくさんもらって、たくさん笑いました。ありがとうございました。

ナイロン100℃『イモンドの勝負』

なんて目がチカチカする配色

見てきた。3時間20分がまったく長く感じないジェットコースター舞台(ときどきコーヒーカップあり)。
プロジェクションマッピングを駆使した映像美術がめちゃくちゃかっこよかった。ハイキュー!! 舞台の映像担当された方らしい。

あえて分類するならナンセンスコメディなんだろうけど、手放しで笑っていいのかどうか悩むストーリーとネタが随所にふんだんに挟まれる。でもだんだん悩むのをあきらめて、みんなうっかり手を放して笑ってしまうのだ。
不条理な世界の中に切なさとなつかしさもあって、どこか「たま」の歌のような雰囲気もある。
とにかく役者の皆さんが実力派揃いなので、ナンセンスをそのまま受け取って楽しめる。作品から正当に受け取るべきストレス以外にストレスがない。

なぜフィクションでナンセンスを欲するのか。それはいま、現実に生きている世界に実在するあれやこれやのナンセンスと、どうにかして向き合ったり、向き合わずに適当な箱に押し込んだりする術を見つけたいからなんじゃないか。ナンセンスに苦しめられたり、これをナンセンスだと思うのはわたしだけなのかと悩んだり、そういった種々のもやもやを、それそのものではなくても、なにかしらの形にしたものを見てみたいと思うからなんじゃないか。
だとすれば、まさしく今日、わたしはそれを見ることができた。

客席の雰囲気もとてもよかった。
一幕冒頭から肩慣らし的に、30秒に1回笑わせにきてくれていたが、二幕に入った途端、観客が見せた本気がすごかった。休憩(たった15分!)の間に、お連れさまがいる方は互いに、おひとりさまは自分の中で、世界観を反芻・整理して覚悟を決めたのだろうか。舞台と客席が完全に一つの空気を作っていたと思う。

演劇から欲しかったものをぜんぶ摂取できた気がする。大満足。

今回、子供は定期テスト期間中につき、申し訳ないがわたし一人で見に行かせてもらった。帰宅して、話をしながら見せたパンフレットが、子供の琴線のどこかに触れたのか、ずっと読んでいる。忘れた頃に届くだろうDVDを楽しみにしてもらいたい。
セリフぜんぶ書き起こしてみたいな(もちろん自分だけのために)。言葉のおもしろさももちろんだけど、じっくり見直して時系列などを構成し直したら、実はかなり緻密な設定であることがわかりそうな気がしている。

2021/11/24

 在宅仕事終わってごはんつくってリングフィットしてお風呂入って、ハー疲れたー、とうっかりマインクラフトで新しいワールドを始めたら時間が溶けた。
 今うろついてるところはやたら豊かで、特に飼わなくても羊も豚も馬もうじゃうじゃいる。原鉄見つけるのだけちょっと時間かかったけど、どうにか鉄は作れたので、ぼけーっとハサミ持って羊毛狩りに出かけ、白から黒、黒から茶色、茶色から灰色、と羊を渡り歩いてるうちに、拠点への帰り道がわからなくなったのでいったん野宿してセーブ。

 今日の昼は、鮭の西京漬焼き、キャベツとエリンギのバター醤油炒め。
 今日の夜は、Kit Oisixでジャージャー麺。

 リングフィットは16分。

 『アダム・スミスの夕食を作ったのは誰か?』読み始めた。最近ちょっとTwitterで話題の「経済棒」の話[1]大野左紀子 on Twitter: … Continue readingともちょっとつながるのでは。
 自分の立場的にはすさまじく痛快に読めてしまうが、ちゃんと批判的に検討する姿勢を保たないといけないんだろう。Got a rocket, in your pocket.