子供のころ仲良しだった、母方の祖父母宅の犬の形見が出てきた。犬が死んだときにわたしがあまりに悲しんで泣いたので、それならばと分けてもらったものである。
長期休暇になると、よく久留米の祖父母宅に行っていた。
夏。
わたしが小さかったころはまだエアコンもなくて、昼下がりの暑い時間帯は縁側でもまだ暑く、軒下のたたきの上の、犬が寝転んでいる一番涼しいところに茣蓙を敷いて、一緒にごろごろしていた。
気が向いたらそこに寝そべったまま、宿題のドリルをやったりもしていた。犬はおとなしくそばで舌を出してわたしを見守っていて、祖父母や叔父たちが、おりこうだねえ、と犬の方を褒めていた。
両親や叔父たちがいなくて祖父母と3人だけで夕食をとるときは、いつもの広い座敷ではなくて、こじんまりした台所で静かに食卓を囲んだ。
台所の小さな窓に、いつもヤモリが何匹かちょろちょろしていて、ときどき外の田んぼ脇の道を自転車や車が通るたびに、何かの影が大きく映っては消える。いつまでもそれを見ていたいような、でもとてつもなく淋しいような気持ちを思い出すと、今でも胸がぎゅーっとなる。
カリカリ梅おいしかったな。