渋谷らくご『柳家花ごめの怪噺 ~落語で聴く実話怪談~』

柳家花ごめの怪噺 ~落語で聴く実話怪談~

実話怪談は、実体験のレポートという体で、最近はネットを中心に語られてきた怪談だ。[1]『裏世界ピクニック ふたりの怪異探検ファイル』(宮澤伊織)
有名どころは「八尺様」とか「コトリバコ」あたりだが、それ以外にもネットには無数の実話怪談が溢れている。
これを落語で聞けるとか絶対楽しいに決まってる、と思って生配信で聞いた。
「最後は皆さんに暗ーい気持ちになって帰っていただきたい」で始まったとおり、特に何もカタルシスのないお話たっぷり。それが実話怪談の醍醐味なので楽しかった。

意外なことに、実話怪談を落語にするという試みはおそらくこれまでなかったそうだ(講談師の先生によるものはあったらしい)。
花ごめさんはもともと怪談大好きで得意な落語家さん。実話怪談は落語と親和性が高いのではないかと思って取り組んだら、思いのほか難しかったとのこと。
まずオチがない。それはそう。
それから、全編ナレーションで進むものを会話劇に仕立てるのがこれまた難しかったと、花ごめさんとゲストの梅木一仁さんが口を揃えておっしゃっていた。

それでも花ごめさん「獣の夢」は、みごとに落語だった。情景が鮮やかに目に浮かぶ。そこまで怖くはなくて、楽しかった。
続いてゲストの怪談師・ハニートラップの梅木一仁さん「死神に見える」。こちらも完全に落語になっていて、聞き入ってしまった。実在する(した)人物が登場するため、なかなかきわどい話ではある。なるほどそうやって倫理面をケアするのか、と思った。
最後に花ごめさんもう一席「ネックレス」。いやあ、人間こわい。

若手の芸人さんがいろいろ実験的な試みに挑戦するのを見るのは楽しい。渋谷らくご最高です。

References
1『裏世界ピクニック ふたりの怪異探検ファイル』(宮澤伊織)

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