『The Unkept Woman』(Allison Montclair)

 大人になってから友達を作るのは難しい、とはよく聞くが、大人の世界もわりと「友達」にあふれている。ママ友/パパ友/趣味友しかり、facebookしかり(それにしても「友達」「親しい友達」「知り合い」分類の身も蓋もなさよ)。
 定義にこだわらず、なにかしらの形式を満たす「友達」を作るだけなら、大人になってもそれほど難しくなさそうだ。でも、その関係をどう維持するか(しないか)、深めるか(深めないか)は、子供時代と同じくやっぱり難しい。

 『The Unkept Woman』(Allison Montclair)は、グウェン(貴族の未亡人)とアイリス(元?スパイ)のデコボコ美女コンビが繰り広げるミステリシリーズ第4作。邦訳が出ているのは第3作『疑惑の入会者』までだけど、待ちきれなくて読んだ。

 第二次世界大戦直後の荒れ果てたロンドンで、ひょんなことから意気投合し、結婚相談所の共同経営を始めたグウェンとアイリス。いまや読者には無二の親友としか見えない二人の間にも、本作ではついに気持ちの行き違いが起こる。
 迷いながらも手を伸ばすグウェンのひたむきさと、迷いとは無縁のようでいてすべての決断が危うさを秘めているアイリスの脆さと、どちらも美しくて目が離せない。
 本作で「friend(s)」という単語は45回出てきた。前作では6回だったから、やっぱり本作のテーマのひとつは「友達」なんじゃないだろうか。

 心の奥底を(たとえそこから注意深く選び抜いたことだけにせよ)打ち明け合うことができると、いかにも友情感は深まる。その関係をたとえば友達レベル1とすると、そこから互いに「今あなたが必要」と訴え、「わかった」と応じる関係に至るまでには、友達レベル50くらいのだいぶ大きな飛躍が必要だ。このへん、恋も友情もあまり変わりないかもしれない。
 グウェンとアイリスを取り巻く男性たちとの関係も、本作で大きく動いていく。アイリスについていえば、えっ、そっちはレベル1で、そっちがレベル50だったの、みたいな驚きがあった。

 タイトルは最後まで読むとなるほど感。邦訳はどうなるのかな。

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