出勤。通勤電車の混雑はすっかりコロナ前に戻ってしまった。混んでる電車キライ……。
昨日の夜、ふと思い立って、映画『ミッドサマー』を見てみた。グロ描写は大の苦手なのだが、最近、『進撃の巨人』とか『ゴールデンカムイ』とかで、少なくとも2次元であればだいぶグロ耐性ができてきたこともあり、せっかくの話題作にちょっと挑戦してみようと思ったのだった。
家族を巻き込まないようにひとりで見たので、こわさを紛らわせるためにTwitter実況で騒ぎつつ、そしていつでも止められるようにリモコンの終了ボタンに指をかけつつの視聴。ときどき目をそらしながらも、なんとか最後まで(R+15版)見ることができた。
音(音楽も含む)と映像がめちゃくちゃ緻密に計算されて作られてる一方で、脚本はけっこうツッコミどころが多いなと感じた。そんな小学生の自由研究みたいな博士論文の書き方ある? みたいな。
グロシーンは確かに気持ち悪かったけど、全体的に心に来るような怖さはなくて、よーし怖がるぞとサイコホラーを期待していたわたしとしては、ちょっと拍子抜け。後から知ったのだけど、アリ・アスター監督自身がホラー映画じゃないよと言っていたそうなので[1]「ミッドサマー」はホラー映画じゃない? 真意をアリ・アスター監督が明かす : 映画ニュース – 映画.com、これは単にわたしの期待の方向性が間違っていた。
この映画で起こる怖いことの大部分がドラッグに起因するものだということがわかりやすくて、怖さの理由に謎がないところが、サイコホラー感が希薄だった理由だと思う。向精神作用のある物質が含まれる何かを口にしたら、普段見えないものが見えたり、普段しないことをしてしまいました、というだけの、この上なくわかりやすい因果。サイコホラーであれば、もう少し人間の心理そのものの底知れぬ怖さみたいなものが描かれている方がわたしとしては好みだ。
ちょっと感心したのは、恋人のクリスチャンが他の女性と性交しているところを目の当たりにしたダニーが号泣し、それにホルガの女性たちが同調して、不思議な号泣のハーモニーが盛り上がっていくシーン。
ダニーの号泣はとても特徴的で、オープニングでは、家族が無理心中したことを知ったダニーが、長く長く引っ張り、大きく息を入れて、また長く長く引っ張るように泣き続ける声が、タイトルバックにずっと流れている。
その後、ダニーはなかなか心ゆくまで泣くことがないまま、ストーリーが進む。泣きたくなってもトイレの中で声を抑えて耐えていたりするのが痛々しい。
それが、恋人の行動によって堰を切られ、特に親しくもない女性たちの集団催眠のような精神作用の共鳴によって盛り上げられて、いつ果てるともしれない号泣として流れ出す。わたし自身はなるほどなあと思ってしまって、カタルシスとまではいかなかったけど、これですっきりする人も多そうだと思った。
このシーンに至るまでに、美しい協和音が泣き声のような不協和音にスライドしていくようなBGMがいくつも使われて、ダニーが抱えていた不安をずっと演出していたのもうまかった。
それにしてもやっぱりドラッグはヤバい。知らない人からよくわからない飲食物をもらったらダメだ。