Fediverse参入する? しない? 問題

 これまでずいぶん長いこと、Twitterとかfacebookみたいに大きな独立系(中央集権型)SNSがソーシャルネットワークの中心だったから、そこで築かれた人間関係は、誰にとってもかけがえのないものになっているだろう。わたしにとってもそうだ。失いたくない。

 でも、ある日、自分が所属しているコミュニティのボスが恐怖政治を敷き始めたらどうだろうか。
 そのボスの気に入らない運営スタッフは理不尽に解雇され、ボスにとって都合の悪い発言をしたコミュニティメンバーは問答無用で発言権を奪われる。申し訳程度にボスのフォロワーに対して多数決をとり、その結果次第で発言権の回復か永久停止が決まる。

 今回のTwitterにおけるイーロン・マスクのふるまいは、わたしにとっては耐えがたいものだった。

 ボスの機嫌を伺いながら、自分以外の誰かが迫害されている(これから迫害されるかもしれない)ことから目を逸らして、そのコミュニティに安住することを選択する?
 確かに、同じような選択をした友人たちとの関係は保たれるかもしれない。
 でも、何事もなかったかのように自分がそこに居続けることで、ボスのやり方を消極的に支持していることになる。
 きわめて理不尽な踏み絵だから、前者を選んだ人が責められるべきではないのは当然だが、わたしには無理だった。

 自由に発言し、その発言の責任は自分でとる、というポリシーを貫くなら、どの中央集権型コミュニティにも属さないプラットフォームを自前で築くしかない。
 しかしそれでは、自分の発言を他人に届けるためにはあまりに力が弱い。

 実はイーロン以前からこの点は問題視されていたが、今回新たに注目を集めているのが、Mastodonを始めとする分散型SNSのオープンソースソフトウェアだ。たとえばMastodonソフトウェアを自分のサーバにインストールすれば、誰でも自分がオーナーになってSNSを作ることができる。ほかにもMisskey、Pleroma、GNU Socialなど、いろいろなマイクロブログソフトウェアが開発されている。
 こういったソフトウェアは皆、共通してActivityPubというプロトコルを使っている。そのため、異なるソフトウェアを使ったプラットフォーム間でフォローし合うことができる仕組みだ。
 ActivityPubに対応した種々のプラットフォームがまとまって形成するソーシャルネットワークがFediverseと呼ばれている。

 Fediverseに最初に飛び込むなら、とりあえず既存のMastodonサーバ(mstdn.jpやfedibird.com)やMisskey(misskey.cloudやmisskey.io)、HIVE socialといったサーバ(インスタンス)にアカウントを作って、サーバ内外のアカウントとつながるのが手っ取り早い。
 たとえばmstdn.jpにアカウントがある人でも、fedibird.comにアカウントを持っている人をフォローし、フォローしてもらうことができる。
 既に多くのメディアや著名人もMastodonに参入し[1]Mastodon Migration 、欧州では政府機関のためのMastodonサーバが設置され[2]Phil Lee: “This is significant … The G…” – Mastodon、世界中でアカデミアのコミュニティも続々とできている[3]Academics on Mastodon
 これらをフォローするだけでも当分は退屈しないだろう。

 ただ、もちろん、既存のFediverseサーバに自分のアカウントをもっている限り、そのサーバのオーナーがボスであり、そのボスの方針に従わなければならないことに変わりはない。
 今、ほとんど手弁当でFediverseサーバを運営してくださっている人たちは、少なくともイーロンよりははるかに良心的だとは思うが、なにせ収益が難しいシステムだから、維持のためにはユーザも寄付等で支える必要がある。うっかりevilなオーナーに買われてしまったら、それこそTwitter問題の再来だってあり得る。

 となると、やっぱり自前でサーバをもちたい。
 でも、Mastodonなどのソフトウェアを自分でサーバにインストールして管理するのはか~な~り、大変だ[4]Mastodon v2.4.0にするためにやったこと – 科学と生活のイーハトーヴ
 日々気楽にブログを書く感覚で、なんとなくFediverseとつながりたい。
 ……と思っていたので、このブログ(Wordpressソフトウェアを使ってます)のActivityPub対応をがんばっていたわけなのだった。
 (お使いのFediverseサーバから、@pollyanna@diary.ihatovo.comを検索してもらえればフォローできます)

 ここまでやる物好きがどれほどいるかは疑問なので、たとえば多くのユーザに信頼されている既存のブログサービス(はてなさんとかAmebaさんとかnoteさんとか)がActivityPub対応してくれたら、Fediverseももっと豊かになるかもしれない。
 実際、古くからあるマイクロブログサービスのTumblrが既にActivityPub対応の方針を宣言しているので[5]Tumblr、マストドンと接続へ。分散型SNS標準プロトコルを採用し、Twitterからの脱出受け入れ強化(CloseBox) | テクノエッジ TechnoEdge、この流れが加速してくれて、うまいこと収益につながってくれたらいいなと期待している。

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